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京都地方裁判所 昭和42年(手ワ)546号 判決

原告

筒井寿賀子

被告

山川健三

<他一名>

主文

被告等は合同して原告に対し金八〇、〇〇〇円およびこれに対する昭和四二年九月一日から支払済まで年六分の割合による金員を支払え。

被告山川健三は原告に対し金一六〇、〇〇〇円および内金八〇、〇〇〇円に対する昭和四二年七月一日から、内金八〇、〇〇〇円に対する昭和四二年八月一日から、支払済まで年六分の割合による金員を支払え。

原告の被告山川初枝に対するその余の請求を棄却する。

訴訟費用中、原告と被告山川健三との間に生じたものは、被告山川健三の負担とし、原告と被告山川初枝との間に生じたものは、これを三分し、その二を原告の負担とし、その余を被告山川初枝の負担とする。

本判決第一、二項は仮りに執行できる。

事実

原告は、主文第一、二項同旨、「被告山川初枝は、原告に対し、被告山川健三と合同して、主文第二項記載の金員を支払え。訴訟費用は被告等の負担とする。」との判決を求め、その請求原因として、「一、原告は、被告山川健三が振出し、

被告山川初枝が拒絶証書作成義務の上裏書した、左記約束手手三通の所持人である。

(1)金  額 八〇、〇〇〇円

支払期日 昭和四二年六月三〇日

支払地、振出地 京都市

支払場所 京都中央信用金庫堀川支店

振出日 昭和四一年六月二三日

振出人 山川健三(被告)

受取人、第一裏裏書人 山川初枝(被告)

第一裏書被裏書人、第二裏書(白地式)裏書人 筒井寿賀子(原告)

(2)支払期日 昭和四二年七月三一日

その他(1)と同一

(3)支払期日 昭和四二年八月三一日

その他(1)と同一

二、原告は、(3)の手形を、支払期日に支払場所に呈示して、支払を求めたが、拒絶された。

三、被告山川健三は、原告に対し、(1)、(2)の手形について呈示免除の特約をした。

四、そのため、原告は、(1)、(2)の手形を呈示期間内に呈示をしなかつた。

五、原告は、(1)、(2)の手形を呈示期間経過後の昭和四二年九月二日支払場所に呈示して、支払を求めたが、拒絶された。

六、よつて、原告は、被告等に対し、(1)、(2)、(3)の手形金と支払期日の翌日から支払済まで年六分の割合の法定利息の合同支払を求める。」

と述べた。

被告山川健三は、「原告の請求を棄却する。訴訟費用は原告の負担とする。」との判決を求め、答弁として

「原告主張の事実は認める。」

と述べた。

被告山川初枝は口頭弁論期日に出頭せず、答弁書その他の準備書面も提出しない。

理由

原告主張の事実は、被告山川健三において自白するところであり、被告山川初枝において自白したものとみなす。

右事実によれば、まず、被告等に対し、(3)の手形金八〇、〇〇〇円およびこれに対する昭和四二年九月一日から支払済まで年六分の割合による法定利息の支払を求める請求は、正当であるから、これを認容する。

約束手形の振出人が手形所持人との間に呈示免除の特約をした場合、手形所持人が呈示期間内に呈示をしなくても、振出人は手形所持人に対し満期以後の法定利息の支払義務があると解するのが相当である。

したがつて、被告山川健三に対し、(1)の手形金八〇、〇〇〇円およびこれに対する昭和四二年七月一日から支払済まで年六分の割合による法定利息、(2)の手形金八〇、〇〇〇円およびこれに対する昭和四二年八月一日から支払済まで年六分の割合の法定利息の支払を求める請求は、正当であるから、これを認容する。

呈示免除の特約は、特約当事者間においてのみ有効であり、当事者以外の第三者に対してはその効力がない(大審院大正一四年一一月三日判決、民集四巻一二号六六五頁参照)。

したがつて、被告山川初枝に対し、呈示期間内に呈示されなかつた、(1)、(2)の手形についての遡求義務の履行を求める請求は、棄却を免れない。

よつて民事訴訟法第八九条第九二条第一九六条を適用し主文のとおり判決する。(小西 勝)

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